フラーレン C60 材料のホール輸送特性を改良する新規かつ簡便な
方法として、C60 の水素化を提案する。
生成熱の小さい11個の C60H2 異性体を選択し、
ホール注入に伴う構造変化、NPA 電荷、ESR パラメータについて議論している。
さらに、11個の C60H2 異性体の再配列エネルギー λ を計算し、
λ の大きさとホール注入に伴う構造変化の大きさの間には密接な関係があることを示している。
マーカスの理論によれば、λ が小さいほど
ホール移動速度定数 kht は大きくなる。
6個の C60H2 異性体が C60(169 meV) よりも
小さな λ を有し、特に、最小の λ (102 meV) を有する異性体 2b はC60 と比較して
40% もの λ の削減を達成している。
そして、2b の 300K における kht の値は C60 の約2.5倍にもなる。
注目すべきことに、合成されている異性体 0a と 2a も、λ の 20% の削減と、
kht の約1.5倍の増大を達成している。
これらの結果は、水素化が C60 材料のホール輸送特性の改良に
有効であり、いくつかの異性体は実際に材料として使用できる可能性を
秘めていることを示唆している。
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