論文 10
フラーレン C60 材料ホール輸送特性を改良する新規かつ簡便な 手法として我々の提案したC60 の水素化C60H4 に適用することにより、 この手法の妥当性を確認している。 マーカス理論に基づき、再配列エネルギー λ とホール移動速度定数 kht を、 Electronic Coupling HAB が一定という前提のもとで、 密度汎関数法 (B3LYP/6-311G(d)) で計算した。 ほとんど全ての C60H4 の異性体が C60 よりも小さな λ と大きな kht を有する。 これは、注入されたキャリアの一部が付加した H 原子に分布し、 C60 骨格の再配列エネルギーに寄与しないためである。 注目すべきことに、主生成物である異性体 1 が 最小の λ (83 meV) を有し、 その kht は C603.28 倍にもなる。 大きなパイ共役系を有する C60H4 異性体が小さな λ を有する傾向にあることから、水素化の中でも、 もとの C60 のパイ共役系を多く残すような水素化が C60 の ホール輸送特性の改良に特に有効であることが分かる。 これらの結果は、有用なキャリア輸送材料の明確な設計指針となる。