論文 12
分子型量子ドットセルオートマトン(分子QCA)の候補であるCreutz-Taube錯体を取り上げ、 デバイス入力(=外部点電荷)のスイッチ(=電荷の変化)に対する分子QCA内の信号伝達を静的・動的に議論している。 静的な取り扱いではスイッチ前後の定常状態の違いを、 動的な取り扱いではスイッチ直後の非定常電子状態の時間発展を信号伝達に関連付けて議論している。 また、動的な議論のためのシンプルなシミュレーション法・解析法を提唱している。 計算は一体近似(DFT法、HF法)で行い、信号伝達に関する全ての議論はマリケン電荷に基づく。 動的な議論から、信号伝達強度(A)はデバイス入力と錯体の距離に強く依存するが 時間発展周期(T)は殆ど依存しない、ことが分かった。 これらの結果は分子軌道軌道エネルギーから容易に説明できる。 大きなA(=大きな分子軌道間の重なり積分)と 小さなT(=大きな軌道エネルギーギャップ)を有する錯体 がデバイス入力のスイッチに対する素早い応答を示すため、分子QCAとして期待できる。