論文 18
フラーレン材料のホール輸送特性を改善するための簡便な方法として、 フラーレンC70の水素化を理論的に考察した。 最初に、C70H2分子間のキャリア輸送メカニズムの解析のために、 C70H2とC70H2+の構造の違い ・ Natural Population 解析 (NPA) 電荷 ・ C70H2+の電子スピン共鳴 (ESR) パラメータ を密度汎関数法 [B3LYP/6-311G(d,p)] で計算した。 次に、エネルギーの低いC70H2の 8 つの異性体について、 再配列エネルギー (λ) と電子的相互作用 (HAB) を計算し、C70の値との比較を行った。 その結果、 4 つのC70H2異性体がC70 (120 meV) よりも小さい再配列エネルギーを有し、 この再配列エネルギーの大きさはC70H2とC70H2+の構造の違いに密接に関係があることが分かった。 また、4 つのC70H2異性体がC70 (24 meV) よりも大きなHABを有することが分かった。 HOMOの非局在化した異性体ほど小さな再配列エネルギー・大きな電子的相互作用を有する傾向にある。 300 K においては、最も大きいホール移動速度定数khtを有する異性体のkhtは、 C60khtの 6 倍以上になることが分かった。